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【歴史本】オルレアンの解放

公開日: : 最終更新日:2022/02/19 読書 , , , , ,

オルレアンの解放

 レジーヌ・ペルヌー著、高山一彦編訳。ジャンヌ・ダルクに関して数々の編著作を残しているレジーヌ・ペルヌーによる、1428年10月から1429年5月の7ヶ月におよぶ、オルレアン包囲戦に焦点を当てた資料本です。

レジーヌ・ペルヌー
  • 著:レジーヌ・ペルヌー
  • 編訳:高山一彦
  • 出版社:白水社
  • 発行日:1986年4月25日

概要

 ジャンヌ・ダルクを主役とした物語では、オルレアンは包囲されている都市として描かれています。ジャンヌ・ダルクが援軍として登場し、いくつかの戦争の後に包囲しているイングランド軍が撤退するというのが大まかな流れです。

 本書では、当時のフランスの情勢から始まり、オルレアン包囲の過程、援軍とともにジャンヌ・ダルクが入城したときの状況、解放とその後までをまとめてあります。

 当時のオルレアンの一市民が残したオルレアン籠城日誌という資料があるとのことで、その籠城日誌より引用して戦況や城内の様子を解説してあります。

 ジャンヌ・ダルクが入城した後の戦争についても、サン・ルー砦攻略戦、オーギュスタン砦奪還戦、トゥーレル攻防戦、その後のイギリス軍撤退まで、前述の籠城日誌だけでなく復権裁判の証言記録も引用し、仔細に渡って記載してあります。

 包囲当時、領主であるオルレアン公シャルル・ドルレアンは、1415年のアザンクールの戦い以来イングランドの虜囚となっていますが、そのあたりについてもちらほら記述がありました。

感想

 たびたび引用される籠城日誌の記述が、臨場感があって非常に興味深かったです。できれば、引用ではなく籠城日誌を通して読んでみたいところですが、残念ながら日本語訳は出ていません。

 オルレアン包囲戦については、戦況の移り変わりなどが詳細に書かれているため、戦記として楽しめました。特にトゥーレル攻防戦については、どういう作戦でどんな流れでの戦闘だったかが思った以上に詳しく描写されていました。

 ジャンヌ・ダルクの歴史本では必ず触れられているオルレアン包囲戦ですが、内部の状況について様々にまとめてあるため、とても読み応えのある1冊でした。

 印象深かったのは、シャルル・ドルレアンが虜囚時代に、自分の蔵書が戦火に巻き込まれることを恐れて移動を指示したというエピソード。ブロワからソミュール、その後はラ・ロシェルまで移させているそうです。

 タイトルの通りですが、オルレアン包囲戦をもう少し詳しく知りたいという場合におすすめの1冊です。

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