【歴史本】ジャンヌ=ダルク
ジャンヌ=ダルク
1975年4月に清水書院から出版された「ジャンヌ=ダルクの百年戦争」を文庫化した書籍。「ジャンヌ=ダルク」というタイトルながら、内容の半分は百年戦争後期の解説という構成になっています。
- 著:堀越孝一
- 出版社:朝日新聞社
- 発行日:1991年7月1日
概要
第1章は、ジャンヌ・ダルクの登場と、オルレアン包囲戦について書いてあります。オルレアンが包囲されていく過程、にしんの戦い、国王軍の引き揚げとブルゴーニュに派遣された使節団。そして、ジャンヌ・ダルクのシノン到来。
シャルル7世は無策でいたわけではなく、春の反攻に備えていて、長期的戦略としてはブルゴーニュ候との和解を目指していた。そうした中でジャンヌ・ダルクが極めて効果的に登場したことに対して、何らかの作為があった可能性がひとつの仮説として示唆されています。
第2章では、百年戦争後半の幕開けとして、シャルル5世の時代に遡って情勢の移り変わりを解説してあります。イギリス王家とフランス王家、ブルゴーニュ家、オルレアン家、それぞれの立ち位置と対立、代替わりを経て、トロワ条約に至るまで。モントロー橋でのブルゴーニュ候暗殺事件については、王太子の謀殺が有力との見解でした。
第3章および第4章は、ジャンヌ・ダルクの足跡を追った解説となっています。書き方は非常に俯瞰的で、ジャンヌ・ダルクの行動とともに、その時々のイギリスあるいはブルゴーニュの動きや思惑についても記載されています。
感想
百年戦争終盤の膠着した戦況の中、忽然と現れた聖女が劇的にフランスを救った。後世ではそんなイメージが定着していますが、実際のところは政治的意図で演出された部分があるのではないかという仮定をベースとし、この時期のフランス史の動向をジャンヌ・ダルクを主軸として説明するという見解に対し、疑問を呈するつくりとなっています。
そういった構成のため、当時の政治の中心であったシャルル7世の宮廷の動きなどが、他のジャンヌ・ダルクを主題とした本よりも詳細に記載されています。ジャンヌ・ダルクをメインに描いた本の後に読むと、角度が違ってとてもおもしろく読むことができると思います。
中でもブルゴーニュ家については、内情なども含め、少し掘り下げた解説がなされています。ブルゴーニュ候の立ち位置や、アルマニャック派との確執など、ブルゴーニュ側の視点で書かれている部分も多く、当時の歴史を多角的に綴ってあります。
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