【歴史本】ジャンヌ・ダルク処刑裁判
ジャンヌ・ダルク処刑裁判
高山一彦編訳。ジャンヌ・ダルク処刑裁判の膨大な記録を編訳した本です。1431年の1月9日から3月25日までが予備審理、3月26日から5月24日までが普通審理、5月28日から5月30日までが異端再犯の審理となっています。
- 編訳:高山一彦
- 出版社:白水社
- 発行日:2002年6月10日(新装版)
概要
序盤の解説で裁判記録の資料について触れられていますが、裁判時にとられたメモを浄書したというフランス語原本は、現存していません。
フランス語原本の審理記録をラテン語に訳して裁判に関連する書簡等の写しを加え、カトリック信徒たちに明かす形式で編纂したものがあり、その写しが5通作成されています。このうちの3通が現在まで残っていて、最も完全で権威ある処刑裁判記録とされていたとのこと。
後に、フランス語原本に準じたものの写しとされるユルフェ写本、オルレアン写本が発見され、法廷供述はこちらの2写本からの引用が主流となってきているようです。
オルレアン写本については、ラテン語記録をフランス語訳したと記されているものの、実は編者がラテン語が得意ではなく、ユルフェ写本かその元となったフランス語記録を写したものだと判明したという、ちょっとおもしろい逸話がついています。
この編訳は、ラテン語記録の仏訳諸版をベースに、ユルフェ写本およびオルレアン写本との相違についても一部注釈で解説してあります。
感想
ジャンヌ・ダルクについて知るための資料としては外せない1冊であり、これだけのものを日本語で読むことができるのは、本当にすごいことだと思います。
この処刑裁判は、司教や博士の問いに対して、ジャンヌ・ダルクがどのように答えたかをひたすら記録してあるものです。啓示に対して、矛盾点がないかを検証するために様々な質問がなされ、それに対してのジャンヌ・ダルクの回答が記されています。
実際に語ったとされている言葉の記録は、ジャンヌ・ダルクがどのような人物であったかを掴むためには、これ以上にない史料です。本来であればフランス語文献を読む気概が必要なくらいですが、それを日本語で読めるというのはとても贅沢なことだと思います。
処刑裁判記録の編訳に費やされた労力を考えると、非常に貴重な本です。ジャンヌ・ダルクに関心があるのであれば、手元に置いておきたい1冊です。
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