【アニメ】91Days

91Days

　2016年7月～10月に1クール13回、本編全12話および総集編1話が放送された、朱夏制作のオリジナルアニメ。禁酒法時代の1920年代アメリカを舞台とした、マフィアもの復讐劇です。

91Days 第1巻

朱夏（2016年）

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• 制作：朱夏（2016年）
• 監督：鏑木ひろ
• シリーズ構成：岸本卓
• 音楽：海田庄吾
• キャラクターデザイン：岸友洋

あらすじ

　7年前にマフィアに家族を殺され、一人生き残って抜け殻のように生きていた主人公アンジェロのもとに、犯人の名を記した手紙が届く。

　アヴィリオ・ブルーノと名を変えて生きていた主人公は故郷へと戻り、幼なじみで親友のコルテオが作る密造酒をとっかかりに、復讐対象であるマフィアの中枢に潜り込んでいきます。

　ネロの信頼を得て側近となり、着々とヴァネッティ・ファミリーを破滅へと導く91日間が、淡々と描かれています。

感想

　暗めシリアス復讐劇ということで心して見始めましたが、ゴッドファーザーを始めとしたマフィアものの洋画を意識した作りでとてもおもしろかったです。徹頭徹尾マフィアの抗争と復讐劇。ヒロインなど影も形もない上に、マフィアものらしくバイオレンス満載でさくさく死人が出ます。

　主人公の描き方や、話の作り方、ラストに至るまでの流れが秀逸で、硬派でシリアスな作品に仕上がっています。ハッピーエンドではないので好みは分かれそうですが、暗めの雰囲気の話が嫌いでなければ、見ておいて損はないです。

　復讐劇は、時代設定や方向性にもよりますが、作品としてはそれを肯定しないというのが定石かと思います。だから、主人公は復讐以外に生きる理由を見つけて降りるか、復讐をまっとうして死ぬ、あるいは消息不明という展開が多く見られます。

　この作品のラストは、ヴァネッティが招待した格上のマフィアのドンをアヴィリオが射殺し、報復としてヴァネッティ・ファミリーは壊滅させられます。一人生き延びたネロは、裏切り者のアヴィリオを拉致し、当てのない逃亡の末に海にたどり着きます。浜辺でネロがアヴィリオに銃口を向けて引き金を引き、その後一人で海から戻ってくるという終わり方です。

　アヴィリオの生死は明確に描かれておらず、二人とも生存、二人とも死亡、片方のみ生存と、どうとでも取れるようなラストでした。

ラストについて

　解釈はそれぞれかと思いますが、個人的には二人とも死亡というのが一番しっくりきます。少なくとも、アヴィリオは生きていないというのが妥当かと。

　アヴィリオはヴァネッティ・ファミリーに家族を殺され、復讐を遂行するために唯一の親友を手にかけています。ネロはアヴィリオの謀略で実の弟を手にかけ、ファミリーを潰されました。互いに互いのすべてを奪い尽くしたどん底の状態で、相手が目の前にいて、マフィアものとしてもどちらかが死ななければ収まらないだろうなという感じです。

　ただ、アヴィリオに生き残るルートがなかったかというとそうでもなく、劇場でネロを殺す、ストレーガの勧誘に応じる、あるいはどさくさに紛れて街を出るという選択肢があったのに、それをことごとく選びませんでした。

　それについては、ネロも何度も問いかけています。最後の最後で出てきたアヴィリオの返答は、”ネロを殺したくなかった”でした。ネロにしても、手の届かないところに逃げられたのならばまだしも、ファミリーを潰した元凶が目の前にいるのに見逃すことは、死んでいった部下たちや父親の手前できないだろうと思います。

　とはいえ、正直ラストで主人公が銃殺される姿は見たくはないので、はっきりと描写しない終わり方も、これはこれで良かったです。

　全体を通して、アヴィリオの心理描写が少ない分、最終話でネロに対して感情をあらわにする場面がとても際立っていました。焚き火のシーンと、浜辺での最後のセリフ。あれが、アヴィリオの辿り着いた結論なんだろうと受け取れます。

　家族を失ってから7年、抜け殻のように生きていたアヴィリオが、この91日は主体的に生きていたのだと思うと、なんとも言えない気持ちになります。

　救いはないけど後味は悪くない終わり方と、アヴィリオの心情を語りすぎない描き方が、本当に絶妙です。ここまで感想を語りたくなるアニメはそう多くはなく、良い作品だったと想います。